食品添加物の安全基準はどうやって決めてるの?

science



こんにちは、アキです。


今回は、「安全だから大丈夫」と言われている食品添加物の安全基準は、そもそもどうやって決められているのかについてのお話です。


食品添加物ってよく聞くけど、そもそも一体なんなの?という方は、こちらの記事からどうぞ➡「食品添加物とは」

食品添加物は厚生労働省の許可を受けなければ使うことができず、厚生労働省に許可を受けるには、厚生労働大臣に食品添加物の指定を受けなければなりません。


厚生労働大臣に食品添加物の指定を受けるには、以下の資料の提出が必要です。

  • 起源または発見の経緯及び外国における使用状況
  • 物理化学的性質及び成分規格
  • 有効性に関する資料
  • 安全性に関する資料
  • 使用基準に関する資料

これらを基にして規格(化学的性質)を決定し、ラットなどを使用した毒性試験が行われ、ADI(Acceptable Daily Intake)と呼ばれる一日摂取許容量が設定されます。そのADIを超えないように使用基準が設定されます。

ADI(Acceptable Daily Intake)

ADIとは許容一日摂取量のことであり、 健康影響の観点から、ヒトが一生涯摂取しても影響が出ないと判断される、1 日当たり、体重 1 kg 当たりの摂取量のことです。 (mg/kg 体重/日)


農薬や食品添加物の残留基準の設定の参考として用いられ、ここまでなら許容できますよ、という量を示すものです。

ADIの算出方法はラットなどを使用した動物実験で無毒性量を調べ、その数値を安全係数で割ることで算出されています 。

安全係数or不確実係数とは?

次から次へと疑問がでてきますよね。

安全係数(Safety Factor)or 不確実係数(UF:Uncertainty Factor) とは、ある物質について、許容一日摂取量(ADI)や耐容一日摂取量(TDI)等を設定する際、無毒性量に対して、さらに安全性を考慮するために用いる係数です。


無毒性量を安全係数で割ることで、許容一日摂取量や耐容一日摂取量を求めることができます。

動物実験のデータを用いてヒトへの毒性を推定する場合、一般的には動物とヒトの違いによって10倍、さらに年齢や持病の有無などヒトの個体差として10倍の合計100倍を安全係数 (Safety Factor) or不確実係数(UF:Uncertainty Factor) としています。

この安全係数or不確実係数(UF:Uncertainty Factor)は動物試験の期間、信頼性などの項目別に不確実なものがあれば、さらに係数を追加するなど専門家判断で設定値が変わることもあります。

※ 安全係数 、不確実係数の他に同義語として説明係数、評価係数、修正係数とも言います。

そもそも10倍って数字はどこからきてるの?

2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳であるのに対し、実験で使われるラットの寿命は系統にもよるけど、2年半ほど。

このことから果たしてその10倍という数値が適しているのかどうか疑問に思ったので、 ガイドラインとかってあるのかなーと調べてみたけど、国際的なルールはなく、それぞれの国や評価機関が妥当と思われる値を選択しているのが現状のようです。

一般的に動物実験の1/100の値が目安という認識で大丈夫だと思います。

ちなみに複数の項目を考慮する場合は係数同士を掛け合わせて使用し、これを不確実係数積 (UFs) と呼んでおり、この値が大きいほどその有害性評価の信頼性が低いといえます。

動物試験の結果から得られた無毒性量等をヒト健康に対する無毒性量に外挿する際に、 動物とヒトの生物学的な違いなどから生じる不確実性を考慮する必要があります。


また、 ヒトの個人間の感受性の差や、試験期間が短い場合、無毒性量 (NOAEL) が得られなかっ たため最小毒性量 (LOAEL) を指標とする場合などにも不確実性を考慮する必要がありま す。


不確実係数 (UF)は、これらの不確実性を補正するために用いられます。
不確実係数 (UF) は、不確実性が大きいほど高い値を設定します。

不確実性の要因と不確実係数

要因 不確実係数の例
① 試験動物とヒトの種差 10
② 個人の感受性の違い 10
③ LOAEL の使用
(本来は NOAEL を使用)
10 (LOAEL 使用時)
1 (NOAEL 使用時
④ 試験期間の短さ 10 (1 ヶ月の試験期間)
5 (3 ヶ月の試験期間)
2 (6 ヶ月の試験期間)
1 (6 ヶ月以上の試験期間)

出典:化学物質の初期リスク評価指針 Ver.2.0 (NEDO・CERI・NITE,2007)

※ NOAEL(No Observed Adverse Effect Level)とは無毒性量のことで、何段階かの投与用量群を用いた毒性試験において有害影響が観察されなかった最高の暴露量のことです 。

※LOAEL(Lowest Observed Adverse Effect Level)は最小毒性量のことで、 毒性試験において有害な影響が認められた最低の暴露量のことです。

不確実係数積 (UFs) = [①種差] × [②個人差] × [③LOAEL の使用] × [④試験期間]


不確実係数積 (UFs) が大きすぎる場合は、根拠となったデータの信頼性が低かったために本来懸念されないリスクが“あり”と判断されてしまうという可能性があるので、リスク評価結果は慎重に扱う必要があります。

参考資料: 厚生労働省HP環境省HP

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA