遺伝子組換え表示制度の現行と新制度について

遺伝子組み換え表示


こんにちは、アキです。

今回は、1996年に商業栽培が開始して以降、そのシェア率は世界規模で年々増加の一途をたどっている遺伝子組み換え作物を使用した食品表示の現行制度と新制度についてお話したいと思います。




日本では、1996年当初、政府は遺伝子組み換え表示は必要ないと考えていましたが、意識の高い消費者が、「このままではいけない!」と地道に活動を続け、5年かけて2001年にようやく、不十分なものではありますが、現行の遺伝子組換え表示制度が導入されました。

消費者一人一人の思いが、表示制度を実現させたんですね。



現行の表示制度導入以降、日本では遺伝子組み換え作物が使用されている食品、もしくは遺伝子組み換え作物が混入している可能性がある食品には、「遺伝子組換え」または「遺伝子組換え不分別」といった表記をすることが義務付けられています。


反対に、遺伝子組み換え作物が使われてない食品には、表示義務はなく、表示不要、もしくは任意で「遺伝子組換えでない」という表示をすることができます。



遺伝子組み換え表示制度のなにが不十分なのかというと、義務表示の対象はわずか8農産物( とうもろこし・大豆・菜種・綿・てんさい・じゃがいも・アルファルファ・パパイヤ )33加工食品群に限られており、遺伝子組換え農作物及びそれに由来する原料から製造されていても、最終製品に加工される過程でタンパク質やDNAの成分が除かれてしまう多くの加工食品(食用油・醤油など)や、畜産における飼料は、義務表示の対象外で、生産者の任意に委ねられているということです。


つまり、大豆や豆腐や納豆、味噌には表示義務がありますが、 同じく大豆を原料とする食品でも醤油には表示義務がないということです。

また、食用油や甘味料、家畜の飼料にも表示義務はありませんし、遺伝子組換えの飼料を食べて育った家畜の肉や卵・牛乳・乳製品などの畜産品も表示義務はありません。


これらは高度に精製されているので、組み換えられたDNAやそれによって発生したたんぱく質を最終製品では検出できないというのが、政府の言い分です。

検査をしても原材料が遺伝子組換えかどうかが分からないから表示させることはできない、というのです。





うーん。



任意って、表示義務もないのに、一体どれだけの企業がわざわざコストのかかる分別生産流通管理された非遺伝子組換え原料を使うのだろう?という疑問が浮かび上がってきますよね。



そこはモラルの問題とはいえ、企業として存続していくには利益がなければならない。




しかし、制度上義務ではないし、うちだけ真面目にやっても利益は減るし、バレなきゃいいやと考える企業が少なくないであろうことは容易に想像がつきます。


実際に義務表示の対象外の加工食品業界や畜産業界においては、ラッキーと言わんばかりに、消費者に明らかにすることのないまま、遺伝子組換え不分別のものに切り替える動きが加速しています。


これでは「遺伝子組換え食品は食べたくない」と考えている消費者でも、商品に「遺伝子組換え」という表示がないので適切な判断ができず、わからないまま口にしてしまうことになってしまいます。








消費者には知る、選ぶ権利が与えられなければならない。

私はこれは完全に表示制度の欠陥による、大問題だと捉えています。


遺伝子組み換え作物を使用しているかどうか、どうやって調べるの?


遺伝子組み換え作物を使用しているかどうかを検査する監視体制は、現状では科学的検証社会的検証があります。


まず科学的検証としてスーパー等や食品製造施設で買い上げ・収去という形でサンプルをとり、定性検査をします。

そこで陰性であればこの段階で検査終了で 「表示に疑義なし」となります。



定性検査で陽性の場合は、社会的検証に移行し、 関係者に対する聞取調査、分別生産流通管理に関する書類の確認、製品規格・製造記録に関する書類の確認、製造工程・施設等の現場確認などをして検査をします。


そこで分別生産流通管理等が適切と認められる場合は「表示に疑義なし」となり、分別生産流通管理等が適切と認められない場合は指導又は指示(公表)となりますが、これまでに指示に至った事例はないとのことです。

※このときの指導なり指示の判断については、「食品表示法第4条の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針」に基づきケースバイケースで判断されるということです。



1 指示の指針
食品表示基準に違反している食品関連事業者に対しては、次に掲げる場合 を除き、指示を行う。
次に掲げる場合に指導を行ったにもかかわらず、当該 指導に従わなかったことが確認された場合も指示を行う。

〔指導を行う場合〕
次に掲げる項目全てに該当する場合は、表示事項を表示するよう、又は遵 守事項を遵守するよう指導する。
① 食品表示基準違反が常習性がなく過失による一時的なものであること。
② 違反事業者が直ちに表示の是正(表示の修正・商品の撤去)を行ってい ること。
③ 事実と異なる表示があった旨を、社告、ウェブサイトの掲示、店舗等内 の告知等の方法を的確に選択し、速やかに情報提供しているなどの改善方 策を講じていること。

2 書類の整備・保存に関する指導の指針
食品関連事業者が飲食料品の表示に関する情報が記載された書類の整備・ 保存を怠っており、食品表示法の規定に基づく報告徴収、立入検査等を行った際に、飲食料品の表示を適正に行っていることの根拠となる情報が記載さ れた書類について報告又は開示をしない場合は、当該書類を整備・保存する よう指導を行う。

3 公表の指針
(1)指示を行った場合には、次の①から③までの事項を公表する。
なお、消 費者利益の保護の観点から、違反の事実を早急に公表する必要性が高い 場合であって、違反事実が確認されている場合には、指示を行わなくて も①及び②の事項を公表することができる。
① 違反した食品関連事業者の氏名又は名称及び住所
② 違反事実(ただし、行政機関の保有する情報の公開に関する法律 (平成11年法律第42号)に照らして不開示情報に該当すると判断されるような例外的な事実があれば、当該事実については公表しない。)
③ 指示の内容

(2)2の指導をした場合であって、飲食料品の表示を適正に行っていること の根拠となる情報が記載された書類が整備・保存されていないことにより、 食品表示基準に違反する蓋然性が高いときは、次に掲げる事項を公表する ことができる。
① 指導を受けた食品関連事業者の氏名又は名称及び住所
② 表示を適正に行っていることの根拠となる情報が記載された書類が開示されなかった場合の当該表示事項
③ 指導の内容

食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針




参考までに、
日本で販売・流通が認められた遺伝子組み換え作物とその用途一覧もこちらに載せておきますね。

作物用途
とうもろこし 食用油、飼料、コーンスターチ、果糖ブドウ糖液糖、
異性化液糖、水あめ、でんぷん、デキストリン、
調味料(アミノ酸等)、醸造酢、醸造用アルコール、
グリッツ、フレーク、菓子など
大豆 食用油、飼料、たんぱく加水分解物、乳化剤など
菜種食物油
綿食物油
てんさい 砂糖(近年の輸入実績なし)
じゃがいも 食用(近年の輸入実績なし)
アルファルファ 飼料(近年の輸入実績なし)
パパイヤ生食

出典:厚生労働省「遺伝子組換え食品の安全性について
農林水産省「遺伝子組換え農作物の現状について」




とうもろこしや大豆は、食用油のほかにも醤油や醸造酢にも使われています。

その他、コーンスターチや果糖ブドウ糖液糖、水あめ、乳化剤、カラメル色素、加工でんぷんといった、加工食品の表示でよく見かける原材料や添加物にも幅広く使われています。


これらは遺伝子組み換え表示制度によるところの表示義務はないので、私たち消費者に明かされることがないまま、遺伝子組換え由来の原料が使われている可能性がとても高いのです。




表示義務があるのは、
重量順で上位3品目かつ、重量に占める割合が5%以上のものと限定されています。


加工食品の原材料の多くは遺伝子組換え由来の可能性が高いのですが、
重量が4番目以降であれば表示しなくてもいいのです。



なにこのトリック。







おかしなもので、その理由について、明確な発言を見たり聞いたりしたことは、今のところありません。明確な理由を知ってる方がいたら教えてください。




例えば遺伝子組換え由来のコーンスターチを使うとき、表示したくない企業なら、4位以下もしくは5%未満になるように配合して表示を免れようとするのではないでしょうか。

このあたりが、企業にとって抜け穴になり、消費者にとっては不十分な表示と言わざるをえません。








「もうやめてよー!聞きたくない!」

という声が聞こえてきますが、事実なので仕方がないです。


さらに追い打ちをかけるようで心苦しいですが、
日本は世界でもトップクラスの遺伝子組み換え作物消費国です。





「えっ!?なんで!?
日本では現状、 遺伝子組換え作物の商業栽培は
行われていないんじゃないの!?」


確かに、日本では遺伝子組換え作物の商業栽培が行われていません。
それなのに世界でもトップクラスの遺伝子組み換え作物消費国なのは、なぜなのか。



それは日本の食品自給率が低いことが一因しています。

そのため日本は遺伝子組み換え作物の栽培が盛んに行われている国々から大豆やとうもろこしを大量に輸入しているからです。



残念ながら私たちは、たとえ気をつけていたとしても、知らず知らずのうちに遺伝子組み換え作物を口にしているということです。


諸外国においての遺伝子組み換え食品の表示義務について


日本の表示制度が不十分なのはわかったけど、じゃあ世界はどうなの?
と疑問に思われる方もいるでしょう。



国ごとに遺伝子組み換え表示制度の内容は異なります。
遺伝子組換えに関して世界一厳格なのはEUの表示制度でしょう。


消費者の権利意識の強いEUでは、 分別生産流通管理の一種であるトレーサビリティ制度を導入しており、 DNAやたんぱく質が残らないものも含め、配合比によらず、 遺伝子組換え農産物に由来する全ての食品に表示を義務付けています。



台湾では、安全衛生管理法が2014年2月施行、表示に関する新規制が2015年5月、同年7月から順次施行され、遺伝子組換え食品の管理が強化されました。



韓国では、日本と同じように、DNAやたんぱく質が残らないものは表示対象外ですが、義務表示の範囲がこれまでは「上位5位まで」だったのが、2017年に「すべての原材料」へと広がりました。



アメリカでも、2018年に全米遺伝子組み換え食品表示法が成立、2020年1月1日より一般施行、 2022年1月1日から完全義務化となりました。


このままでは「遺伝子組換えでない」表示が消えてしまう?


日本の遺伝子組換え表示制度には、義務表示と任意表示があります。



任意表示に関して、2023年4月1日から 「遺伝子組換えでない」表示について厳格化した新制度になりますが、義務表示は以前より求められている拡大はなく、現行制度のままです。


表示義務の対象となるのは意味不明なトリックがあるこれまで通り、原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上であるものです。


現行の任意表示制度では、分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆及び、とうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品は「遺伝子組換えでないものを分別」 「遺伝子組換えでない」等の表示が可能ですが、新制度では、当初、限りなく0%に近くなければ何も表示することはできないとされていました。


それでは分別生産管理がされていて、意図せざる混入が5%以下の豆腐だったとしても、原材料の大豆に95%以上の遺伝子組換えでないものを使っているのに、 「原材料:大豆」としか書けなくなってしまうということです。


国産農産物については、いまのところ遺伝子組換えの栽培は行われていないため、遺伝子組換えでないと考えられますが、分析技術が進歩している現在、遺伝子組換えと非遺伝子組換え原料を使用している工場では、何らかの原因で微量でも混入した場合、組換えDNAが検出される可能性はあり、その場合これまでのように「遺伝子組換えでない」表示はできなくなります。


そうなればせっかく労力とコストをかけて遺伝子組換えでない原材料の分別を適切に実施してきた企業にとって、その努力を消費者に伝える機会が失われることになります。

それはまた消費者にも大きな影響を及ぼします。
企業、消費者ともに損失でしかありません。

その結果、 企業がもうやってられないと表示をあきらめ、一度作り上げた分別生産管理(IPハンドリング)のシステムを手放してしまったら・・

復活させることはなかなか難しいと思います。

また、非遺伝子組換え作物を栽培していた生産者も、もう作らなくなってしまうかもしれない。



このように遺伝子組換えでない原料を調達するためのシステム自体が無くなくなってしまうという最悪の可能性も出てきます。


完全に不のスパイラルです。


さすがにそれはよくない!
と消費者が声をあげたことにより、 0%ではないが意図せざる混入率が5%以下に抑えられるよう分別されたものについては、分別が適切に行われていることが伝わり、消費者の誤認を招かないことを条件として、その旨が伝わる新しい表示を任意で認める方向で落ち着きました。


これにより分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆及び、とうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品は「適切に分別生産流通管理された~」等の表示が可能となりました。


<表示例>
「原材料に使用しているトウモロコシは、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」

「大豆(分別生産流通管理済み)」

「遺伝子組換えの原料の混入を防ぐため、分別流通されたとうもろこしで作ったコーングリッツを使用しています。」

「遺伝子組換え原料の混入を防ぐため分別管理が行われたものです。」 等




遺伝子組換え農産物の具体的な混入率等を併せて表示することも可能ですが、 「5%以下遺伝子組換え混入の可能性あり」というような表示がされた場は同じ意味であっても、消費者は遺伝子組換えが入っていると解釈し避けてしまうことになります。


また、表示と商品に矛盾がないように注意しなければならないので、ロットごとに表示を変えなくてはならない可能性もあることから、 企業側にとって任意で表示する際の労力とコストがこれまで以上に重くのしかかることは間違いないといえるでしょう。


新制度では、分別生産流通管理をして、遺伝子組換えの混入が限りなく0%に近いと認められる大豆及び、とうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品のみ「遺伝子組換えでない」や「非遺伝子組換え」等の表示が可能となります。

出典:消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度 に関する説明会資料」




もともと新制度ができたきっかけは、混入率が0%ではなく、実際には5%以下の意図せざる混入の可能性があるのに、「遺伝子組換えでない」という表示をするのは消費者の誤解を招くという消費者委員の意見を反映させた案で、たしかに一理あり、私もそう思います。



しかし現行制度では、義務表示の範囲が先述したように限定されているため、実際には遺伝子組み換え作物が使われているのにも関わらず、店頭で「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」という表示を見かけることはほぼありません。



義務表示の範囲を狭めたまま、任意の「遺伝子組換えでない」表示を混入率0%(検出下限以下)と厳格化することに問題があるわけで、その場合、「遺伝子組換えでない」と表示される食品はこれまでと比べると激減すると思われます。


そして表示義務のない食用油、醤油、糖類などの場合はこれまでの制度と変わりないので、遺伝子組換えの原材料を使用していても、「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」と表示する必要はありません。



遺伝子組換えでない原材料を分別して使っていても表示に反映できない一方で、表示義務のない食品では、ほとんどの原材料が遺伝子組換えであっても表示する必要がない。

このように、同じように表示が無い場合でも、意味が違ってきてしまいます。




これでは消費者は遺伝子組換え食品を避けられなくなるばかりか、遺伝子組換えでないものを選ぶ権利すらも失うことになりかねません。


それによって、高価な「遺伝子組換えでない」表示の食品と、そうでない遺伝子組換え不分別の原料を使った食品の二極化も懸念されます。





消費者庁は、これら改正は消費者の利益のためと言っていますが、本当にそうでしょうか?


私は、遺伝子組換え原料を使った食品については全てに表示を義務づけること、加工後に組換えDNA、由来タンパク質が検出されるかどうかという「科学的検証」のみを根拠とするのではなく、流通過程の各段階で「科学的検証」も織り込んだうえで、EUのように分別生産流通管理証明書や規格契約書等を用いた、いわゆる「社会的検証」を根拠とすることを強く望みます。




遺伝子組み換えでないものを食べたい、遺伝子組み換え作物を使用した食品をできるだけ避けたいと願うなら、私たち消費者がすべきことは、1996年から声をあげ続け、5年後の2001年にようやく現行の遺伝子組み換え表示制度が導入されたときのように、新制度の内容が確定する前に、せめてもと分別生産管理されたが意図しない混入が5%以下の場合に任意表示ができるようにすべきだと声をあげたときのように、流されず、諦めず、変えられるところは変えていってほしいという声を、これからも政府や企業に届け続けていくことが大切だと思います。




企業がいくら真心込めて、信念をもって、志高く良い商品を作っても、消費者が買わなければ、利益がうまれなければ企業は存続できないので、作りません。

作りたくても作れません。




需要がある、買ってくれるんだということが分かれば、企業は自信を持って良い商品を供給することができる。

それよって私たち消費者もまた、求める商品を手にすることができるのです。




最後になりましたが、確固たる信念をもって良い商品を作り続けてくださっている企業の方々には深く感謝しております。いつもありがとうございます。

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