鶏卵生産者経営安定対策事業

egg



こんにちは、アキです。




今回は卵について、鶏について、お話したいと思います。




農林水産省の「鶏卵生産者経営安定対策事業」の存在を知っている消費者は一体どれくらいいるでしょうか。


鶏卵生産者経営安定対策事業は、これまで「鶏卵価格差補塡事業」と「成鶏更新・空舎延長事業」の二つの事業から成り立っていましたが、令和2年度からは新たに「受給見通しの作成」が加わりました。

これらにあてられる予算はなんと51億7400万円(前年度、前々年度ともに48億6200万円)で、これには私たちの税金も使われています。





事業内容の1つである「成鶏更新・空舎延長事業」は2010年(平22年)に始まりました。
成鶏更新・空舎延長事業と言われても、私たち一般の消費者からしたらなんのこっちゃですよね。



子どもにもわかりやすく言うと、「鶏の屠殺をしましょう。鶏を屠殺したらお金をあげますよ。屠殺する処理場にもちゃんとお金あげますからね。あ、その時に60日以上は鶏舎を空けといてね。そしたらその期間に応じてお金あげますよ。」というものです。



卵の過剰生産で価格が下落した際、緊急措置として生産を減らすために採卵鶏を屠殺し、その後60日以上鶏舎を空にすれば生産者に奨励金を交付するというものです。




卵の過剰供給・・。

この事業の実施主体である一般社団法人日本養鶏協会HP統計、成鶏羽数の推移よると、日本国内の採卵鶏の数は平成31年時点で約14億羽。

過剰供給が問題として、毎度毎度多額の税金を使って鶏を屠殺し続けて一体なんの改善になるのだろうか。
一時的に数字を変化させたところで根本的な解決にはならないのではないだろうか。



じゃあどうしたらいいか。



そんなのは至極シンプルな話で、そもそもの雛の導入数を減らしていき、徐々に全体の羽数を減らせば、それに伴い当然、卵の生産量も減る。

その場しのぎの対策ではなく、恒久的に減らしていくしかない。


そんなことをしたら卵の価格が上がるんじゃないの?という声が聞こえてくるが、その通り。

卵の価格を上げたらいい。



私たち消費者は、物価が上がり続けているのにも関わらず、物価の優等生などと言われ、40年近く小売り価格がほとんど変わっていないということが、そもそもおかしいのだと気づくべきだ。


こちらの年次統計によると、1950年(昭25年)に1パック10個入り価格が現代の2,370円から始まり、1961年 (昭36年)737円までゆるやかに下降、下降した理由は学校給食の歴史年表と照らし合わせながら見るとわかりやすいのだが、アメリカから大量に小麦が輸入されたことが影響しているのだろう。

鶏が卵を産むには当然、飼料を要する。
これまで国内でまかなっていた飼料が輸入により安く手に入るようになったことが価格下降の一因であろう。

1962年 (昭37年)は170円となり、1972年 (昭47年)に71円となるまでゆるやかに下降。1973年 (昭48年)に671円、翌1974年(昭49年)が717円となってから徐々に下降していき、2001年 (平13年)の280円を最後に、それ以降は200円前後を推移している。

1972年 (昭47年)の71円から、1974年(昭49年)の717円へのおよそ10倍にもなる高騰の理由はおそらくオイルショックが影響しているのだろう。

物価が上がってもたまごの小売り価格が変わらないのは、

・敗戦後アメリカの過剰分であった小麦を受け入れたこと
・円高による輸入飼料の価格低下
・鶏の品種改良
・徹底した機械化による圧倒的な大量生産
・遺伝子組み換え作物の飼料導入


これらが影響していることは間違いない。





昭和20年代後半、東京一世帯あたりの年間たまご消費量が270個前後だったのに対し、昭和35年には571個と2倍以上になっており、戦後、日本の食文化の変化がここからも読み取ることができますね。




現在、日本の養鶏は世界的に廃止が進むバタリーケージといわれる狭い網の檻で行われることがほとんどです。生産効率を上げるため、ほとんど身動きできないほどの狭い檻のなかで鶏は一生を暮らします。


糞が下に落ちるように床も網でできており、止まり木で休む習性のある鶏にとって本来ふさわしくない環境で、産んだ卵が転がるように傾斜がついていて、狭い檻から出られるのは、卵を産めなくなって、人間の用済みとなり、廃鶏と呼ばれて処理されるときだけ。



品種改良によって肉用の鶏はブロイラー、卵を得るための採卵鶏はレイヤーと呼び、他方の目的には適さない。したがって、レイヤーの孵化させて生まれる半分のオスのヒヨコは人間にとって不用物であり、生まれてすぐにすりつぶすなどして殺されている実態を知る消費者は少ない。



2005年ドイツの食べ物の大規模・大量生産の現場を描いたドキュメンタリー映画「いのちの食べかた」にもヒヨコを物のように扱うワンシーンが出てきます。個人的におすすめ映画の1つです。

※お子さんと見られる場合は事前に保護者の方が見て内容を把握したうえで、お子さんに見せるか見せないかの判断をお願いします。ちなみにうちの子たちは、全部ではなく、部分的に一緒に見て、その後話し合いの時間を設けました。




生産効率を圧倒的に高めることで結果的に過剰供給を引き起こす。
過剰になれば市場価格は安くなり、生産者への負担が増す。
そして今度は「鶏卵生産者経営安定対策事業」として51憶7400万の予算をあてる。



日々なんの疑問も抱かずにひたすら卵を大量に消費し、卵の特売に飛びつく私たち消費者の行動が、政府や養鶏業界による、まるで自作自演のこのおかしい仕組みを助長させていることは紛れもない事実だということを、私たち1人1人がしっかりと受け止め、考えるべきではないかと思います。



昭和33年のエンゲル係数は41.2%と現在の倍近くありました。
このことから当時は食べていくのがやっとだったとも考えられますが、逆に今よりも食を大切にしていたとも考えられます。



どんな環境でどのように生産されたのかが明確な食物が市場に出るまでにどれだけのコストがかかるか。少し想像力を働かせれば、そんなに安く市場に出回るわけがないことが理解できるし、そりゃそうだよね、と納得がいく。

実際、我が家の家計費の内訳は圧倒的に食費が多い。




どんな環境でどのように生産されたのかもわからない安い卵にとびついて、一時的に得をしたつもりでも、結局、成鶏更新・空舎延長事業には多額の税金が使われていることを私たちは忘れてはいけない。

さらにその都度、多くの成鶏の命が無情に失われているということも忘れてはいけない。それらを踏まえ、今後どのように行動していくのか、私たちは自ら考え、選択していかなくてはならない。




平成24年度
大規模生産者  150円/羽 以内
中小規模生産者 200円/羽 以内
食鳥処理場   17.4円/羽 以内


平成26年度
210円/羽 以内
ただし、⼩規模⽣産者(10万⽻未満)は270円/⽻ 以内
食鳥処理場  23円/羽 以内

平成27年度
平成28年度

210円/羽 以内
食鳥処理場 23円/羽 以内

平成30年度
平成31年度(令和元年度)

210円/⽻ 以内
ただし、⼩規模⽣産者(10万⽻未満)は270円/⽻ 以内
食鳥処理場 23円/羽 以内


このように、これまでは成鶏を1羽屠殺する毎に最高で270円が養鶏業者に交付され、出荷された成鶏の屠殺を行う食鳥処理場にも1羽につき23円以内の奨励金が交付されていました。
 


予算が大幅にアップした令和2年度の鶏卵生産者経営安定対策事業の内容を見てみると、空舎期間60~90日はこれまで同様の210円/羽となっているが、10万羽未満飼養生産者についてはこれまでの270円/羽から310円/羽へと拡充されている。

また、これまで設定のなかった空舎期間91~120日が新規設定されており、420円/羽、10万羽未満飼養生産者は620円/羽となっています。

食鳥処理場への奨励金もこれまでの23円/羽から倍の47円/羽と拡充されていました。





私が中学生の頃、数学の先生が雑談で「先生が子どもの頃は卵は高級品だったんだよ。」と話してくれたのを今でもよく覚えている。


私が中学生だったあの頃、数学の先生はいくつだったんだろう?おじさんではあったけど、おじいさんではなかった。当時の私からすれば完全に“おじさん”だった先生は40~50代だっただろう。


当時スーパーの特売で1パック98円!なんてのもよく目にしていた。

私自身も、まだ知識不足だった10代の頃にそんな特売たまごを購入したこともある。


そんな価格で売られていること自体に疑問を抱かなくてはいけなかったと今では思う。

今は多少高くても、信頼できるたまごを選んで、1つ1つ、ありがたく大切にいただいています。

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